―ポップでキュート。でも幸せじゃないラブソング―

 

今日紹介するのは、僕の愛するバンドCzecho No Republic(チェコ・ノー・リパブリック。以下、チェコ)の

 

「For You」

 

という曲です。

 

 

2015年2月リリースの同タイトルのメジャー2ndシングル「For You」及び、同年9月リリースのメジャー3rdアルバム「Santa Fe」に収録されています。

シングルリリース時には、グリコ「ポッキーチョコレート」のCMソング(スペースシャワーTV ver.)に採用され、渋谷スクランブル交差点のグリコビジョンでもMVと共に流れました。

 

「For You」ジャケット 

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(オフィシャルHPより引用)

 

画像クリックで動画再生スタート 

※このMVはshort ver.です。full ver. は4thアルバム「DREAMS」(初回限定盤)のDVDに収録されています。

 

(youtubeより引用)

 

ご覧のように、この曲はタカハシマイさん(以下、タカハシさん)がメインボーカルを務めておられます。

当ブログではこれまでチェコの曲を何度か取り上げてきましたが、タカハシさんがメインボーカルを務める曲を紹介するのはこれが初めてですね。タカハシさんは歌唱力が高いのはもちろん、表現力がとても豊かなのが素敵です(タカハシさんは意識して曲ごとに歌い方を結構変えているような気がします。彼女がメインボーカルの曲だけとってみても、ずいぶん歌声の表情が違うのでぜひ聴き比べてみてください。当ブログでも今後どんどん紹介していいきます!)。

武井優心さん(以下、優心さん)が楽器のできなかったタカハシさんをチェコに誘ったのも「歌ってもらうためだ」とおっしゃっていたことからも分かるように、タカハシさんの1番の魅力はやはり歌声だと思います。

 

曲自体のデモは2013年頃に作っていたそうですが、それからずっとアレンジなどが決まらずにずっとストックされていたようです。そんな中、ポッキーのタイアップの話がきて、リリースがバレンタインの直前であったことから、女性から男性へのラブソングを出そうということで、(デモでは優心さんが歌っていたものを)タカハシさんが歌うという運びになりました。

 

この曲、とってもポップでキュートですよね。そして、すごく耳に馴染むというか、スッと入ってくる。そうでありながら、ありふれたポップではなく、ちゃんとチェコのポップとして洗練されている。そのチェコっぽさというのが何たるかと問われると返答に窮してしまうのですが、チェコのアイデンティティーがしっかりと曲に根ざしているということだけは断言できます。

実際このシングルはオリコンでそこそこ良いところまでいきましたし、それだけ多くの人にこの「For You」の良さが伝わったのではないかと思います。

 

他方で、タカハシさんをメインボーカルしたことやある種わかりやすいポップな曲であることを指摘した批判も見受けられます。ただ、こういった類の批判をしている人の多くは、チェコのことをまともに知らないのだと思います。なぜなら、チェコは「メインボーカルをできるメンバーが3人いる」、「メンバーそれぞれが色々な楽器を弾ける」というのを前提に色々なことにチャレンジしているところに良さがあるし、先に指摘したように大衆受けのみを意識したポップではなく彼ららしさがしっかり反映された曲であるからです。

(もうちょっと核心的な批判なら、議論の余地があるというか傾聴に値すると思うのですが、こういった表面的な批判をチェコに対して向ける人が少なくないことはファンとして悲しいです。おそらく、こういう表面をなぞっただけの批判をされる人たちは、批判的な言説を唱えることで自らの音楽的見識の高さを示したい見栄っ張りなんだと思います。中身のないスカスカな批判なのに、そのトゲは人を傷つけるだけの鋭利さを持っているからタチが悪い。どうか、そういったものにメンバーのみなさんが傷つけられないことを願います。)

 

「For You」は、ポップでキュートなサウンドでありますが、完全にハッピーな曲と言うことはできません。むしろ、アンハッピー。それは、歌詞のいたるところから推察することができます。

 

Yeah 陽は穏やか

君を想った

ねぇ 雲に乗ったら

会いに行くよ

(同曲より引用)

 

君に会いに行くのは「雲に乗ったら」。これは「君」がすでに天国にいて、自分が天国に行ったら会いに行くということだと思います。「君」が天国にいるということは、他の歌詞からもうかがえます。

 

For You

君はハニカミ笑う

So Cute

君といたかった

(同曲より引用)

 

「君といたかった」というのは、もう「君」といることはできないということですよね。

 

そう。この曲は、失った人を想った歌なんです。それについては、インタビューで次のように語られています。

 

─たしかに幸福感もあるんだけど、それと同時に切ないニュアンスも感じられますよね。「君」という存在はもうこの世にいないんじゃないかという。

〔優心〕 まさにそうですね。歌詞を書き直したときに、亡き人を思うというテーマが出てきて。あとは、タカハシさんと俺の2人で歌うという前提がある中で、デュエットっぽくしたくなかったんです。「僕はこう思う」「私はこう思う」みたいな会話っぽい歌詞にするのはやめようと。それを意識してたらめっちゃ時間がかかって。作詞は(山崎)正太郎にかなり手伝ってもらいました。

〔山崎〕 ラブソングでサウンドもポップでキャッチーだからこそ、「僕たち幸せです」みたいな曲にするのはちょっと違うなと思って。そこに含みの要素として、さっき話に出た“亡き恋人を思う”みたいなテーマを設けたらいいんじゃないかと思ったんです。「You」という対象を聴き手それぞれが想像できるような。そのほうが万人に響く曲になると思ったし。

〔タカハシ〕 最後のどんでん返しじゃないけど、幸せなラブソングと思いきや「君といたかった」という部分でハッとさせられるので。最後まで聴いてもらって初めてこの曲のストーリーを伝えられるものになってよかったなと思いました。歌入れのときは、私は感情が声に出やすいので歌が出しゃばらないように気を付けましたね。

 (音楽ナタリー「Czecho No Republic ポップに振り切った幸せじゃないラブソング」(2015年)より引用)  ※〔〕部分は僕が編集しました。

 

実は、この曲のリリースの前に優心さんのおじいさんが亡くなられたそう。そのことも含めて、次のインタビューではより詳細に「For You」について語っておられます。

 

―さて、2月4日にリリースされたニューシングル『For You』は、ハネるリズムでポップなメロディー。歌詞は、他愛ないようでどこか切なく、曲の最後では<君といたかった>と過去形で歌われる歌詞が胸をざわつかせます。先日、武井さんは「“For You”はばあちゃんに捧げたい」とTwitterでつぶやいていました。

武井:実は、“For You”は単純なラブソングではなく、「亡き人を想う」がテーマなんですよ。この曲を作り終わった頃にじいちゃんが亡くなってしまったので、なんとも言えない気持ちになりました。そのときに、この曲がばあちゃんにとって「じいちゃんを想う曲」になったらいいなって思ったんですよね。生きてる頃からじいちゃんは耳が遠くなってて、コミュニケーションを取るのもスムーズではなかったんですよね。で、俺が20歳くらいの頃、じいちゃんとばあちゃんの家に遊びに行ったら、ばあちゃんが小さな声で「私、おじいちゃんと年取ってこれてよかったわ」って言ってて。多分じいちゃんには聞こえてないと思うんですよ。独り言みたいにポロッと言った言葉だったんですけど、それにすごく感動して。あとでばあちゃんに手紙を書いたんですよね、「俺、人の愛とかわかる年じゃないけど、すごく痺れました」って。お互いに生きていても、全てをわかりあっているわけじゃないし、届けたくても届かないメッセージってあるじゃないですか。たとえ自己完結しようとも、溢れてくる言葉というのはあって、それは相手が生きてようが死んでようが一緒だと思う。“For You”は、そういう見返りを求めない真っ直ぐな気持ちをテーマにしたつもりです。

(CINRA.NET「あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.18」(2015年)より引用)

 

「君」を亡くした悲しさだけでこの曲は終わっていない。ポップなサウンドを通じて、失った「君」を想うことは幸せでもあることを表しています。そこに救いがあるし、この曲の美しさを見出すことができると僕は思います。

 

それから「For You」の歌詞には気になる一節があります。

 

オーシャンビューの丘の上で

暮らそう 家を建てるよ

年を取ろうよ 二人だけで

(同曲より引用)

 

これとそっくりな歌詞がチェコの曲にあるんです。

それは「バラード」という曲。その歌詞がこちら。

 

ねぇ、そして海の見える丘を探そう

家を建てて住むよ2人で

(同曲より引用)

 

明らかに意識的に似せてますよね。もしかすると、このふたつの曲は繋がっているのかもしれません。「バラード」は「君」が生きていた時の、「For You」は「君」を失ってからの曲。僕は今のところそのように理解しています。

 

少しだけ、音の話もします。

 

僕が「For You」をサウンド的に好きだと断言できるようになったのは、昨年の11月くらいです。それまでも、上述してきた歌詞の意味を感じとり、好きな曲ではあったのですが。

これは、あるファンの友人のちょっとした一言がきっかけでした。

 

「『For You』の正太郎さんのドラム良くない?」

 

その人は、それほど深い意味を込めて言った訳ではないだろうし、なんなら「そんなこと言ったっけ?」ってな感じで忘れているかもしれませんが。僕にとっては重要な一言でした。

僕は、この問いかけにすぐうなずけなかったんです。それで、「あ、聴いているつもりだったけど、ちゃんと聴けてなかったんだな」って思って。家に帰ってからイヤホンつけてじっくり聴いたんです。そしたら、なんかすごくて!わーってなって。最初はドラムに感動して。そこから一気に他の音もすごく素敵に感じて。脳内で虹色の水が入った水風船がパチーン!ってはじけたようなそんな感覚。それ以来、すっかりこの曲の虜になりました。

「For You」は、タカハシさんと優心さんの歌声の掛け合いも素敵なんですけど、正太郎さんのドラムの温かみも素敵なのでぜひ注意して聴いてみてください。

 

それから「For You」には、サックスとトランペットも入っています。それらが、サウンドに鮮やかさを添えているところもこの曲の魅力のひとつだと思います。

 

また、「Santa Fe」ではリマスタリングされて収録されているので、音が立体的になりよりきれいに聴こえるようになっています。

 

「Santa Fe」ジャケット

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 (オフィシャルHPより引用)

 

「For You」は、スピッツのファンクラブ会報「Spitzbergen」にて草野さんがおすすめされていた曲でもあります。実は、今日この曲を紹介したのもスピッツがきっかけです。というのも、昨日スピッツの「みなと」を紹介したのですが、この「みなと」と「For You」は強く共鳴していると思うからです。

両者とも亡き恋人を想うというのが歌詞の題材になっている(と僕は考えている)んです。たしかに、それぞれの音は全く異なります。でも、それぞれの曲からは似たような優しさ、あたたかさを受け取ることができます。そして、どちらも素晴らしい曲だと思っています。

 

スピッツの「みなと」については、こちらのリンクからどうぞ。 

mr-arrow.hatenablog.com

 

だから、スピッツファンには「For You」を聴いて欲しいし、チェコファンには「みなと」を聴いて欲しいと思っています。もちろん、どちらのファンでないという方にも。

 

この2曲が多くの人の耳に届いた時、きっと世界が少しだけ優しくなると思います。

 

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・For You<初回限定盤>(CD+DVD) (レア曲もやっているライブDVD付き)

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それでは。

 

この記事は、Czecho No Republicの「For You」(作詞・作曲:武井優心 / 編曲:Czecho No Republic)という曲のレビューです。